劇団鹿殺しが2006年に上演した純愛ホラー監禁劇を、AKB48、コンドルズとのタッグで再演したもの。ドラマのキーとなる謎的存在のハマダマコトに岩立沙穂。高校でコーラス部だった女子の十年後、自称トップキャバ嬢が谷口めぐ、居酒屋のバイトリーダーが太田奈緒。山犬にコンドルズの山本光二郎、コーラス部の顧問・服部にオレノグラフィティ、インド人コックに丸尾丸一郎。
冒頭から、ややテンポがゆるく、熱度が低い展開に不安を覚えるが、おそらくはAKB48のメンバーたちの個性というか、ある種の素人っぽさを大切にしている舞台感覚によるもので、ある意味では現在を反映していると言えるのかもしれず、虚心に初演のDVDを見比べてみたい思いに駆られる。
元女子高生と山犬の4者の背景が深く描かれ、もつれ合い、それが服部に向かい、山小屋に監禁された3人の状況が逼迫するにつれ、ドラマは徐々に熱を帯びてくるが、ハマダの純愛がその双子の姉の関わりによって歪んだ形で現実化するという結末が見えても、若干の謎が残っていることが気になったり、展開を理屈で追って納得するという作業を必要としたりで、ドラマに没頭するには至らない。その多くはAKB48のメンバーたちのテンポ感や60%程度にしか思えない歌唱によるものだと思うが、それを演出の丸尾がよしとしているのは、やや好意的に過ぎるかもしれないが、演技の熱度の低さによってドラマの高い熱度がどのように成立するかという実験を試みたからではないか。
このドラマが熱演されたら、それはそれで密度の高い感動的な舞台になっていただろう。しかし、丸尾やAKB48の認識している現在は、その熱度を回避したところにあるのかもしれない。
ハマダに連れ添う山犬のダンス的な演技は、もちろん印象に残った。山犬の孤独や悲しみが切なく迫った。岩立と山本の相互依存的な関係が、この中では唯一絶対的なものだったように思える。
(2019年3月7日、ABCホールでの所見)
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